巫女による湯立て神事を終えた炎はチロチロと残り火となって夕景にとけ込んでいく。神事は田原本町法貴寺に鎮座する池坐神社の末社である厳島神社の祭礼だった。小学高学年の女児巫女が笹を振って湯立つ釜に入れて四方に飛ばす。畑では雨が降り、日が照って順調に稲が育ってきた。台風が来ないように無事に稲刈りができるよう祈る予祝行事である。池坐神社の拝殿前の境内にゴザを敷いて座る宮司と役員。二人だけで始まった酒宴は灯火の灯りに照らし出されていた。この夜は「弁天さんのヤマモリ」と呼ぶ寺内垣内、宮の前垣内の行事である。厳島の弁天さんは垣内の守り神。予祝の行事は、飲んで食べて神さんと共に飲食饗宴する地域の習わしの夜の籠もり。「夜籠もり」はいつしか「ヤゴモリ」と訛って「ヤマモリ」と転化した。60年も前のこと、子供だったころは夜も遊べるというので「ヤマモリ」に来るのが楽しみだった。家族ぐるみで山盛りの食事は食べられるし、境内ではしゃぎ回ったと回想される。一組、二組と集まって境内が賑わってきた夜。昼間の暑さがどこかへ行ったように涼しい風がほてった顔をなでていく。(H21. 9. 7撮影)
法貴寺厳島神社 「御湯の笹」
【法貴寺厳島神社 「御湯の笹」】
法貴寺厳島神社 「弁天さんのヤマモリ」
【法貴寺厳島神社 「弁天さんのヤマモリ」】
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